ちとせももとせ

広く浅くミーハー人間の備忘録。

あたっくNo.1を見てきた日記 または、岩谷さん演じる横川に泣かされた話

銀座の博品館劇場で、6/2(金)初日を迎えたあたっくNo.1を見てきました(まだこのあと6/7(水)ソワレ、6/11(日)千穐楽を見てくる予定です、久々の複数回通い)。

【あらすじ】
作・演出家の樫田正剛の伯父が潜水艦内で書き綴った日記から全てがはじまった―。
1941年。昭和16年11月18日。
男たちは行き先も目的も告げられることなく潜水艦伊18号に乗艦した。
祖国を離れた二日後、艦長が全容を通達した。
行き先はハワイ真珠湾、目的は戦争。
「敵に不足なし」艦内に若者たちの咆哮が響いた。
男たちの青春がここにある。
方南ぐみ公式HPより

 

あたっくNo. 1、お恥ずかしながら、舞台が発表になってチケットを取っても、なんとなく下調べする気になれず…。結局、どんなお話かもよく知らないまま初日を見に行きました。
戦時中の話で舞台は潜水艦である、程度のざっくりした知識で初日を見てきたのですが、前半爆笑からの後半は大号泣。…思うことはたくさんあったはずなのに、観劇後ははあ~~~と魂が抜けてしまって。
それでもなんとか記憶を揺り起こして書かないと記憶が薄れていくトリ頭なので、がんばります。
そこそこネタバレもしていると思いますので、まだ中日も迎えていないですし、ご自身で観劇にいらっしゃる場合、この記事は観劇後にご覧いただくのがよいかと。まだ初日しか見ていないので、7日と千穐楽を見たら追記するかもしれません。

 

 

配役(原作のストーリーを知らないので配役というよりも役名)も発表されていないし、原作は読んでいないしで、当日までだれが座長なのかもわからなかったのですが、幕が開いて勝杜(藤原樹さん)と古瀬中尉(橋本真一さん)のシーンが終わり、ひとりで舞台に立つ戸谷さんを見て、「あれ、もしかしたら戸谷さん、座長なのか…!?」とびっくりしました。座長だった。
終演後に物販でパンフレットを購入したのですが、そこでやっと配役等々を知るというアレさ。…いつものことです。
私は途中までは寺内中尉(戸谷公人さん)が主役で座長だと思って見ていたけど、原作を読んだ方や、他の役者さん贔屓の方はまた別の登場人物が主役だと思うかもしれません。それくらい、捨てキャラ(言い方が悪い…)がいなかった。

 

出演者の中で私が知っているのは、太田将煕(劇団プレステージというか、ドリフェス!)、 近藤頌利(ハイステで見た)、戸谷公人(ドリフェス!)、橋本真一(テニミュ1st六角を円盤で見た)の4人のみ。
LDHの文化にも、2.5、宝塚、東宝ミュ以外の演劇文化にもそう深く触れているわけでもなく、岩谷さんや藤原さん、そのほかの出演陣のお名前にもピンと来ていませんでした。無知でごめんなさい。でもみんなすーーーっごかった。
特に、横川役の岩谷さん…めちゃくちゃに泣かされましたよ…。

 

そうなんですよ、横川役の岩谷さんの話がしたいんですよ。唐突だけど!…と思ったけれど、いやもうどこから話せばいいんだろう…。
前述のとおり、LDH系列には詳しくないので(ごめんなさい)、普段の岩谷さんがどんな男の子(あるいは男のひと)なのかも知らないし、パフォーマー?ダンサーさん?ということしか情報がなかったのですが*1、彼の演技は本当に素晴らしかったです。これが初舞台と伺いましたが、鳥取出身の朴訥な青年兵という役どころがぴたりとハマっていた気がします。
あたっくNo.1の板の上、彼は昭和16年をいたいけに生きていました。
横川のまっすぐさ、ひたむきさ、周りの言葉からうかがい知れる彼の幼さ、彼の育った環境…そういうすべてが、岩谷さんのくしゃくしゃっと笑うすこし幼い顔とか、ぎゅっとこぶしを握る仕草とか、泣きそうに古瀬を見つめる仕草とか。そういうところからじわじわとにじみ出て、溢れて、こぼれて、ラストに向かってどんどん積み上がっていって、それで最後、あのシーンでしょ…。ああ、やりきれないなあ…って。

 

正直、泣くってわかってる題材で泣くことほど悔しいことはないのですが(負けず嫌い!)、これで泣かないひとはいないでしょ…。
戸谷さん演ずる寺内中尉が出世欲に駆られ(出世欲というより、彼はただただ古瀬にあこがれ、古瀬を見返したいだけにも見えた)執拗に俺にその役目を譲れ、と迫るたび、横川は「できません」「むりです」と反駁するのですが、この時、横川は必ずお尻のあたりをぎゅうっと両手でつかむんですよ。怯みそうな自分を叱咤するみたいに。
横川役の岩谷さんは体格の良いキャスト陣が揃う中ではひとり背が低めで、いがぐり頭と呼ぶのがぴったりの坊主で、水兵さんのイメージそのままの白い長袖長ズボンを着ていて。ああ、きっと横川はまだまだ年若い兵隊さんなんだろうな…そんなことを考えてしまいました。
そんな彼が、自分に課せられた過酷な任務を受け入れること。
上下関係の厳しい軍隊という組織にあって、上官に対して「できません」、「むりです」、って真っ向から拒否の言葉を口にすること。…平和な現代を生きる私には想像しかできないけれど、どれほどの覚悟が必要だったのだろう。どれだけ、言葉にならない思いをぎゅっと結んだくちびるの中に飲み込んだのだろう。

 

乗組員に、「小っちゃい潜水艦」に乗るのが古瀬と横川だと知られてしまったとき。
鳥取の田舎から出てきた朴訥とした男の子は、乗組員みんなの前で、声を大にして、これは恩返しです。と言う。断ることなんて、考えもしなかった、そんなことを言います。もうね、ほんとに劇場中に響く声で横川が言うんですよ。舞台の真ん中で。呆然とする乗組員と、観客の前で。
白いシャツを着せてもらった。靴下をはかせてもらった。靴を履かせてもらった。国からお給料をもらって、そのお金で田舎の家族がお医者様に見てもらえる、ご飯を食べられる。だから、選んでもらったら、断るだなんて、そんなことはしない。
…すごくつらいなって思いました。思い出しながらブログを書いてるいまも涙が出て来そうなのだけれど、ほんと、もう、そんな一途さがつらい。

 

最終盤で、横川は、顔をくしゃくしゃにして笑います。
行ってまいります、って手を振って、古瀬といっしょに、満面の笑みを浮かべます。清々しい、それこそ、青空の下で見せてくれよってこっちが願っちゃうくらいのおっきな笑顔です。
作中は昭和16年、戦争の足音が比喩でなくすぐそこまで忍び寄る、そんな時勢でも、脚本・演出の樫田さんがパンフレットで言及したり、公式HPのあらすじにある通り、伊18号のなかで暮らす彼らにも、楽しい瞬間、悔しい瞬間、そういう、私たちと同じ感情があったんだろうなあって。
…あーなんか岩谷さんの話って言うか、横川の話になってる…笑

 

高野洸さん演じる二本柳も、そこまで目立つかと言われたら目立たないのですが(ごめん…)、高野さんの持つ知的な雰囲気、誠実そうな佇まいと、凛々しさと紙一重の頑迷さっていうのかな…頭はいいだろうに見るからに不器用そうで、めーっちゃ好きでした。なかなかつらい役どころだと思う。ずっと上官に鉄拳制裁されてた…すごい音してた…。

このツイートでも書いたんですけど、私は聡明なひとが好きなので(笑)、古瀬中尉と二本柳がとても好きです。
二本柳と古瀬が対比だとも思わないのだけど、なんか、ついこんなこと考えてしまう。
古瀬は明るくて、ひとに好かれる男だけど、二本柳は賢いけど考えていることにふたも出来ないから、開戦前で血の気がはやるイ18号の中ではすこし浮いてしまう。
二本柳が勝杜と取っ組み合い本気で喧嘩をするシーンではずっと泣いてました…。ほんとに本気なんだよ…体格良いから怖いよ…。
二本柳って、たぶん現代日本人にいちばん近い考えを持っていて、(古瀬も国力を客観的に見る、という意味での知識は二本柳なんて及ばないほどのひとだったのだろうけど、彼は大日本帝国海軍の中尉で、一年もの間極秘任務のために生きてきた人間なのであるいみ自暴自棄を感じる…)、ただひたすらに、日本はアメリカに勝てない、ってアメリカの軍事レポートを引き合いに出して主張してくるんです。大日本帝国海軍の中にあっては、二本柳は明らかに異質の人間。でも、聡かった(あえて過去形で書くのだけど)古瀬が諦めてしまったことを、二本柳はずーっとずーっと言い続けてくれる。日本はアメリカには勝てない。国力の差がありすぎる。いまの日本人からしたら自明の理なんだけど、当時の日本人は、軍人はそれを信じない。つれえ~~~~!!!ってなった。
そんな二本柳がなんで海軍にいるのかが、わたしは知りたい。ので原作読みます。(アマゾンで1週間~4週間待ちになってたのだけど…)

 

あんまり俳優さん個人のことは書けないな~…。それくらい、あたっくNo.1に出演されてる俳優さんは俳優さん本人の影が鳴りを潜めて、みんな昭和16年を生きる横川だったり、古瀬だったり、二本柳だったり寺内だったんだよ。
もうほんとみんなに見て欲しい。追加公演は平日の昼間と言うこともあってまだチケットもあるみたいなので、ほんともうみんな見て!!!チケット買ってあげるから見て!!!って言いたい。

 


ドリフェス班見に行ったのに横川と二本柳のことばっか考えてしまってあんまり書けることがない…。
と思ったのですが、一点だけ、戸谷さんのこと。
コメディタッチの部分ではにこにこ笑っている寺内中尉を演じる戸谷さんが、面白く思っていない横川や古瀬に対するときだけはとてもクールなお顔(言い方を変えると無表情で怖い顔)で横川に迫るので、ただのイビリにしか見えないのですが(笑うけど笑えないところ)、いやもうほんと…横川ぁあああってなりました。そりゃ拳も握るし古瀬に頼りたくもなるし90°の挨拶もするわ…って感じでした。
以上!笑

 


あと二回見に行くので、もうちょっとストーリーのこととか、細かい部分も見ていきたいです。
私も二十代半ばになって、どんどん自分より若い俳優さんなんかも出てきて。そういうひとたちが戦時中の話を演じるのって結構エグいなって改めて思いました。
また追記すると思います!とりあえず、きょうのところは以上!あーいいもの見た!

*1:横川があまりにもよかったので平成の世を生きる普段の、ほんとうの彼について知ろうという気はあまりわかない…